ジオン注射
ジオン注射

テレビや雑誌などで「注射だけで痔が治る」「切らずに治療できる」といった言葉を見たことはありませんか?
それが「ジオン注射」と呼ばれる新しい治療法です。
痛みを感じにくい内痔核の部分に薬を注射するだけで、従来の手術でよくある強い痛みや出血をほとんど感じることなく治療できる、画期的な方法です。
ジオン注射療法は、内痔核に対して専用の薬剤(ジオン®注)を注入することで、出血や脱出を抑える新しいタイプの治療法です。薬剤が内痔核に炎症を起こし、徐々に硬化・収縮させることで症状の改善を図ります。
従来の痔の治療といえば、切除を伴う手術が一般的で、腰椎麻酔が必要なうえ、術後の出血や肛門への負担も少なくありませんでした。これに対し、ジオン注射は局所麻酔で対応可能で、身体への侵襲も比較的軽く、痛みや出血のリスクを抑えられる点が特徴です。そのため、「もっと早くこの治療を知っていれば…」という患者様の声も少なくありません。
ただし、ジオン注射は内痔核にのみ適応があり、外痔核に対しては効果が期待できません。多くの場合、内痔核と外痔核は連続して存在するため、治療方針は個別の状態に応じて決定されます。
ジオン®注に含まれる有効成分は、硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸の2つです。硫酸アルミニウムカリウムが内痔核に炎症を起こし、その修復過程で線維化が進み、痔核が小さく硬くなります。また、血管の透過性を一時的に高めることで局所の血流を抑え、出血を素早く改善します。タンニン酸は、この炎症を抑える役割を担い、余分な組織障害を防ぎます。
この治療法のルーツは1970年代の中国にあり、日本では2005年から医療現場で使用されています。国内では製薬企業が協力して日本仕様に合わせた改良を施し、内痔核の治療薬として開発されました。
ジオン注射療法は、内痔核に特化した効果的な治療法です。肛門や直腸周辺には、肛門を自然に閉じる役割を果たす柔らかい組織があり、この組織内に毛細血管が豊富に存在します。肛門への圧力が増加すると、血管が膨張して蛇行し、静脈瘤のように膨らんだ内痔核が形成されます。冷えや長時間の座位・立位、いきむことなどが肛門に負担をかけ、痔核の発生を引き起こします。外痔核は肛門周辺に、内痔核は肛門の内側に発生しますが、ジオン注射療法が効果を発揮するのは内痔核に限ります。
内痔核が初期の段階では自覚症状が少なく、便通によって擦れた時に出血が見られます。出血がひどくなることもあります。進行すると、内痔核が排便の際に肛門外に脱出し、最初は自然に戻りますが、次第に指で押し込まないと元に戻らなくなり、最終的には押しても戻らない状態に進行します。進行がさらに進むと、外痔核を伴った内外痔核になることもあります。ジオン注射は、この内痔核に対して非常に有効な治療法です。
ジオン注射は、どこの医療機関でも受けられる治療ではありません。
この治療では「四段階注射法」と呼ばれる高度な注射手技が必要とされます。そのため、専門の講習会を修了し、「内痔核治療法研究会」に登録された医師のみが、この治療を行うことができます。
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まず麻酔を行い、肛門周囲の筋肉をやわらかくして注射しやすい状態にします。
(当院では主に仙骨硬膜外麻酔を使用しています)
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ひとつの痔核に対して、図のように4つのポイントに分けて薬剤を注射します(図1)。複数の痔核がある場合は、それぞれに注射を行います。
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注射直後から痔核に流れ込む血流が減少し、出血が止まりやすくなります。
また、脱出していた痔核も徐々に引っ込みやすくなります。
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治療から1週間~1ヶ月程度で、痔核自体が縮小し、引き伸ばされていた支持組織が本来の位置に戻って固定されることで、脱出の改善が期待できます。
ジオン注射は非常に優れた治療法ですが、すべての痔に効果があるわけではありません。
適応となるのは「内痔核」のみであり、外痔核や裂肛などには効果がありません。
また、再発率にも注意が必要です。開発時の臨床試験では約16%の再発が報告されており、従来の手術療法(約2%)と比べるとやや高めです。
当院では再発率約8%と低い水準を保っていますが、長期的なデータがまだ十分でないため、今後の経過には慎重な観察が必要です。
ジオン注射に使われる薬剤は強い効果を持つため、体への反応も起こりやすい側面があります。
主な副作用としては、
などがあります。
またまれにですが、直腸潰瘍・狭窄・膿瘍形成といった重い合併症が報告されることもあり、専門的な知識と慎重な管理が必要な治療です。
ジオン注射は内痔核に注射を行うため、注射部位は粘膜で知覚神経が少なく、痛みを感じにくいです。また、傷ができないので術後の痛みもほとんどありません。
通常、治療後翌日には出血が軽減し数日後には痔核の脱出が改善します。1週間から1ヶ月後には、痔核が縮小し、肛門周辺の腫れも収まります。
ジオン注射は痔を切らない治療です。そのため傷を作らず、術後の回復が早く、痛みも少ないのが特徴です。また、日帰りで受けられるため、忙しい方にも適しています。
特に食事制限はありませんが、治療当日や翌日は消化のよい食事をおすすめします。またアルコールは10日目くらいまでは控えた方がいいでしょう。
排便時の痛みはほとんどありませんが、治療から1週間以内は便を少し柔らかくする薬を使用することで、痛みを軽減することができます。
多少の出血が見られることがありますが、通常は数日以内に治まります。万が一、長期間続いたり大量の出血があった場合には、早めに受診してください。
ジオン注射後は、特に過度な負担を避けていただければ、通常の生活に戻ることができます。激しい運動や長時間の座りっぱなしは10日くらい避けることをおすすめします。
治療後は無理にいきまず、排便時に無理な力をかけないようにしましょう。便を柔らかくする薬を処方することもありますので、指示に従って使用してください。
治療から1ヶ月を過ぎてから2ヶ月くらいまでの間に出血が見られることがありますが、ほとんどの場合軟膏を使用していれば自然におさまります。万が一、大量の出血や強い痛みをともなう場合は、早めに受診してください。
ジオン注射療法では、基本的に生活制限はほとんどありませんが、過度な負担を避け、規則正しい生活を心がけることが回復を早めます。強い痛みや違和感がある場合は、痛み止めを使用することもあります。
ジオン注射療法では、基本的にアフターケアは少なくて済みます。治療後、特別な処置を行う必要はありませんが、軟膏を2ヶ月くらい続けていただきます。強い痛みや違和感がある場合は、痛み止めを使用することがあります。また、治療後の生活についても、10日間くらいは過度な負担を避け、規則正しい生活を心がけることが回復を早めます。